23: こういう家族の形もあるんだといつか思ってもらえればそれでいい
私は車いすに乗って、
3人揃って分娩室を出た。
そのまま、娘と両親達の待つ部屋へ。
娘は、私達がやっと戻って来た事を
喜んでいたけど、
私の腕に抱かれている弟を警戒していた。
あんなに楽しみにしていたのに、
見ようともせず、逃げていった。
おかしい。
何度か声をかけてみたが、
怖い
と言った。
感受性の強い娘には、
弟の生気が感じられず、
戸惑っているのだと感じた。
私達は、娘に何も伝えていなかった。
申し訳ないことをした。
ごまかしている場合ではない。
私は、息子を抱くのをやめ、
娘を膝にのせた。
そして、説明した。
「Kくんはね、病気だったの。
しんどいんだって。
だから、もうずっと寝んねするって。
もう、起っきしないで、寝んねして、
うえに行ったよ。」
とっさの説明だったけど、
娘は一言、
「いっしょに、ほいくえんいきたかった・・・」
全てを理解している。
その瞬間から、
娘は、弟をかわいがり始めた。
頭をなで、握手をし、
産着に自分が大切にしているシールを貼ってあげていた。
私とダンナさんは、
やっと家族が揃った事が
やはりとても嬉しくて幸せだった。
ただ、その周りで
両親達はメソメソしていた。
息子をだっこして、
こんなにかわいいのに・・・
なんで・・・
と思わずにはいられないのだろう。
でも私達には、そこはフォローできなかった。
今の、そしてこれからの、
私達をみて、
こういう家族の形もあるんだと
いつか思ってもらえればそれでいい。
「たましいのおうち」について
木工作家の多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。