11: 一人の人間として尊重するのなら、彼の生命力を受け入れることなのだ。
私達は、先生達に、
息子の使命を尊重したい旨を話した。
彼の生命力を信じて、使命を全うさせてあげたい。
息子は自分の意志で産まれてきて、
そして閉じる。
それを受け止めて見守ることをしたい。
自力で生きる力を持ち合わせていないのなら、
ここで手を貸すことは、
彼の使命を冒涜している気がした。
都合のいい解釈だととらえる人もいるかもしれない。
親なら、何があっても命を助けるべきなのかもしれない。
でも私達は、息子が病室で、
機械や管に管理されて生き続ける姿を想像した時、
それはただのこちら側のエゴなのではないかと思えてならなかった。
この子のこの状態で延命措置をすることは、
息子のすべてを受け入れていない気がした。
息子を本当に愛し、一人の人間として尊重するのなら、
彼の生命力を受け入れる事なのだと思った。
「なぜ、
そんなわずかな生きる力だけを持ってでも
産まれてくるのか。」
それを受け止めるのが親としてのやるべき事だと思った。
そんな話を先生方にした。
ずっと黙って聞いていてくれた。
ただ、
私は、息子を抱きたかった。
ほんの数時間でもいいから、
抱きたい。
生きて産まれてきてほしい。
それだけは、私のエゴだ。
このたった1つの願いだけでも
叶うだろうか・・・
先生方は、
この私のお願いのために
全力を尽くしてくれることになった。
無事に産ませる
息子は未だ逆子だったこともあり、
陣痛を待って産むのにはリスクがあった。
一連の検査で、
臍帯が首に巻き付いていることも分かっていた。
私の願いを叶えるために、
早めに入院して、
あらゆる手を尽くす方向性で決まった。
「たましいのおうち」について
木工作家の多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。