2-6:誰もが自分の子の話をするように、私も息子の話をしたかった。

日常が始まった。

いちおう産後なので、

私は、仕事も休んでいて、

まずは体を整えるための時間だった。

むろん、何もする気にならない。

何も手に付かない。

というよりも、

何をしていいのか分からない。

あぁ、

心にぽっかり穴が空いている。

少しずつ動けるようになって、

外に出るようになると、

妊娠を知っている人からは、

「産まれたの~?」

と軽やかな言葉をかけられる。

悪気なんてないのは分かっている。

人に会いたくなくなっていった・・・

息子の事を隠すつもりは毛頭なかった。

でも、相手の反応が、

どうしょうもないぐらい失意に満ちたり、

気の毒がられたり、

申し訳なさそうにされたりすると、

相手のためにも、

言わない方がいい気がしてきた。

本当は、聞いて欲しかった。

そして話したかった。

どんな子で、

どんだけりっぱだったのかを

話したかったのだと思う。

誰もが、自分の子の話をするように、

私も息子の話をしたかった。

だけど、それを

そっか、そっか、

よかったね。

とは言ってもらえないのだと分かった。

片や、全てを知っている身内はというと、

こちらもまた、話させてくれる雰囲気ではなかった。

気を使って、

息子の話題に触れないようにしている感じだった。

私の両親は、

私が息子の名前を口にするたび、

苦虫を噛みつぶしたような、

困ったような表情をした。

ダンナさんは、

一生懸命日常に戻っていた。

どのタイミングで言っていたか忘れたが、

「オレだって、しんどい」

と漏らした一言に、ハッとした。

だけど、それをフォローできる気力はなかった。

そうか、そうだよね。。。

でも、私もしんどい・・・

唯一、息子への想いを話せる相手がいた。

娘だ。

娘は弟が大好きだった。

早々にいなくなってしまった事は、

とても残念がってはいたけど、

娘にとって、弟は存在していた。

他の大人達は、

息子がいなかったかのように振る舞うけれど、

娘はそうではなかった。

大人の事情で、

いつか誰も息子の話なんてしなくなるのではないか、

という不安を、

私は息子が産まれる前から持っていた。

その不安が現実になりつつあったけど、

娘がいるかぎり、

息子の事実はなくならないと思えた。

「たましいのおうち」について

木のおもちゃ作家、多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。

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