10: いのちを操作しないと決めた
それから数日後、
最終的な話をしに大学病院へ行った。
病名が決まって、
今後の方針を話し合う事になっていた。
この時の内容も覚えていない。
最初に診察をしてくれた若い男の先生、
産科主任のベテラン先生、
胎児エコー専門の先生、
主治医になる若い美人女医先生
4人ぐらいに囲まれていたと思う。
ほとんど内容を覚えていないけど、
たった1つ覚えているのは、
生きられる可能性を尋ねた際の答え。
長くて2週間
新たな現実だった。
後戻りも止まることも許されない。
進み続ける列車に乗っているのだ。
いつか止まることはあるのだろうか・・・
息子の病気は
骨形成不全Ⅱ型
骨形成不全の中でも致命的なもの。
完全に突然変異でしかないらしい。
骨の形成が弱いので、
胎児エコーでも、何度か骨折をしている箇所が確認できる。
そして、骨だけが正常に成長しないということは、
正常な大きさの内臓が圧迫されるということ。
生きられない理由は、
肋骨内に充分な空間が作られないので、
肺が膨らまない。
すなわち、胎児の間は生きられるが、
肺呼吸に切り替わる時点で、
呼吸ができなくなるという。
このあたりから、
この子を授かった意味を考えるようになっていた。
絶対に意味がある。
よくここまで大きくなってくれたと思った。
この子は、何かを伝えようとしているとしか思えない。
私達に何かを気づかせるために来てくれている。
私達は、息子の生命力を見守りたいと思っていた。
自分で持って生まれてきた使命の通りに生かせてあげたい。
この子のいのちを操作しないと決めた。
「たましいのおうち」について
木工作家の多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。