22: 喜びだけでいっぱいだった

息子はダンナさんに

産湯に入れてもらっていた。

さっぱり洗ってもらって、

オムツもはかせてもらって、

産着も着せてもらって、

めちゃくちゃかわいかった。

私は産後の処置をしてもらいながら、

ずっとそれを眺めていた。

普通分娩をすると、

人間の脳は、

すぐさまホルモンを出し、

出産の痛みを忘れさせ、

幸せで満たし、

今から始まる子育てに向かえるように、

臨戦態勢を整え始める。

まさにその状態だった。

喜びだけでいっぱいだった。

腕の中で看取ることはできなかったけれど、

息子は私達の希望をすべて叶えてくれた。

本当に、よくぞ無事に産まれて来た!

主治医の女医さんが言った。

「出てくる時、

足が動いていたよ。」

この一言は、

その後の私の心の支えになっている。

息子が生きていた姿を

実際に知っている証人のようで、

私には宝物のような言葉だった。

「先生、お休みの日に

ありがとね」

休日に駆けつけてくれたのだ。

先生が来てくれなかったら、

私はグレていたかもしれない。

本当に、この先生には救われた。

こんな事も言っていた。

「実は帝王切開の用意もしていました」

息子のチームは、

本当に万全の体制を取ってくれていた。

人って、

こんなにもやさしさを受け取れるものなのだ。

処置が終わって、

起き上がれるようになった私は、

やっと息子を抱いた。

長女の時に、

ここまでの幸せを感じただろうか・・・

生きていて当たり前で、

これから始まる子育てにドキドキして、

純粋に幸せを感じられていただろうか・・・

息子は、

ただ、幸せを感じさせてくれた。


「たましいのおうち」について

木工作家の多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。

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