19: 息子がお腹を蹴破った!

息子の時間は限られているから、

家族も両方の両親も、

出産時に駆けつけることにしていた。

だから息子はそれを待っていたと思う。

翌午前中に、ようやく全員が揃った。

案の定、陣痛はどんどん強くなる。

悶絶する私を見て、

母が言った。

「あ、その顔!

A(長女)の時もその顔してた。

もうすぐ産まれるね。」

なんだそれ!

これはイタイ顔やわ!

とはいえ、いつ出てくるのか分からない。

助産師さん達は、

まだ出てこないとふんでいる。

殿方達と娘はお腹が空いている。

ちょっとお昼に行ってくると言って、

ダンナさんを残して、みんなは出て行った。

その直後、お腹の右下に

猛烈な痛みが走った。

これは、陣痛ではない。

息子が足を突っ張って、

お腹が中から押されている。

ちょっと、ちょっと、

痛い、だいぶ痛い。

お腹が破れそうだ!

なんかおかしい。

その合間にも陣痛がくる。

でも痛すぎて、

ほとんど説明できない。

ダンナさんの顔をみて

助けを求めるも、

彼もナースコールを押すしかない。

その瞬間、

なにやら、どばどばと出てきた。

痛すぎて、どこから何が出てきているのか、

すぐには分からなかった。

破水したーーー!!!

と叫んだら、

ダンナさんが、詰め所に走って行った。

私は分娩室へ運ばれた。


「たましいのおうち」について

木工作家の多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。