15: たった1つの望みも叶わないのか?

生きて産まれるためには

あるいは帝王切開なら、

可能性があるんじゃなかろうか・・・

私の思考は、完全に

自分達の望みを叶える方向を探っていた。

先生達とは、

お互いに、方向性をまとめてから、

話し合う事になっていた。

先生達は、

逆子のまま普通分娩をしようと言った。

私達は、

帝王切開の可能性はあるのかと尋ねた。

先生達は、面食らっていた。

まさか、私達からこのタイミングで

その言葉が出るとは思っていなかったのだろう。

最初の話し合いの時に、

息子の意志を尊重したいから、

こちら側の都合で出す様な事はしたくないと言っていたから。

先生達は、帝王切開における様々なリスクや必要性、

母胎への影響などを伝えてきた。

また、その際の生きて産まれてくる可能性についても

話し合った。

結局答えは出ず、いったん落ち着いて考えて、

翌日もう一度話し合うことになった。

ダンナさんと二人。病室。

どうしていいか解らない二人。

途方に暮れそうだけど、

なんとかしないといけない。

納得できる方向性を出さないといけない。

でも思考が止まる。

とにかく頭を冷やして、

落ち着いて整理する必要があった。

面会時間ギリギリまで話していたけど、

どうにもならず、

お互い一人になって考える事にした。

病室で一人、

何時間、何を考えていたのかは

覚えていない。

夜中に、母に電話をした。

今朝の出来事から、

今の状況を話した。

なぜ帝王切開を考えているのか。

生きて産まれてほしい。

長く生きられない事は

分かっている。

でも、生きて産まれて、

抱っこしたい。

ただそれだけの望みも叶わないのか・・?

他に何も、望まない。

ただ息子を抱っこしたい。

腕の中で看取りたい。

ただそれだけ。

それだけを唯一の光として

ここまできた。

それを絶たれるのが怖い。

「怖いんだよぉー!!!!」

私は初めて言った。

怖い、と。

そうか。怖かったのだ。

これから向かう現実が

本当は

怖かったのだ!

そして、この時初めて泣いた。

怖いと泣いた。

息子のこの一連の流れの中で、

初めて泣いた。

これが

私の心の叫びだと知った。


「たましいのおうち」について

木のおもちゃ作家、多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。

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