14: 看取るなら腕の中で看取りたい

この朝の出来事は、

私を動揺させた。

生きて産まれてくることだけを

望みにしていただけに、

ショックは大きかった。

あれだけしか動いていないのに、

息子の心臓が止まりそうになった。

それが首に巻き付いている臍帯のせいだとしたら、

産道を通って出てくるまでの距離なんて

耐えられないんじゃないの???

血の気が引いて、アタマが真っ白になりそうだった。

息子の心拍数が急激に下がったあの瞬間、

これから向かう現実を見た気がした。

頭では解っていた事を

事実として感じてしまった。

まだ覚悟ができていないと知った。

あの瞬間、

悲しくなった。

泣きそうだった。

頑張って生きて!!と心の中で叫んでいた。

やっぱりお別れなんていやなんだ!

なんで!なんで!なんでー!!

面会に来るダンナさんの到着が

あんなに遅く感じたことはなかった。

ダンナさんが来るや、

今朝の報告をした。

私はショックを受けているし、

先生達は逆子が直らないので思案しているし、

これではとても出産に向かえる状況ではなかった。

私は、唯一の望みが絶たれる事を恐れていた。

私達は息子が生きて産まれてくる事を望んでいた。

生きて産まれて、我が家の「長男」として

存在を残してほしかった。

生きて産まれれば、戸籍に名前が載る。

長男の証ができる。

せめてそれだけでも残ってほしかった。

そうでないと、

彼の事が、誰からも忘れ去られそうな気がして 、

いなかったことになりそうな気がして、

怖かった。

生きて産まれて、抱っこしたい。

看取るなら、腕の中で看取りたい。

それまで一度も考えたことのなかった

「帝王切開」

という言葉が浮かんだ。


「たましいのおうち」について

木工作家の多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。

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