9: 致命的な病気。一刻も早く名前で呼んであげよう。

その後も色んな検査をして

息子は骨の病気らしいということが分かった。

骨は人間の基礎となる部分なので、

骨の病気は、致命的であること。

ゆえに、症例が少ない。

要するに生きられないから。

ただし、生きられる分類のものもある。

息子はとてもまれな病気らしく、

先生達のネットワークを使って、

もう少し詳しく結果を精査する必要があるとのこと。

それで、最終的に病名が決まるとのことだった。

病名が決まらないと、

治療方法も、今後の方針も、対策も打てないとのことだった。

致命的な病気。

うすうす気づいてはいたけど、

現実となった。

一刻も早く、名前で呼んであげよう。

待合で決定していた名前を正式に命名した。

そんなことしかできなかった。

その頃、数日おきにあちこちの病院へ行っていたので、

私達は、実家に住み込ませてもらっていた。

ダンナさんと母が時間をやりくりして

娘の保育園の送迎をしてくれていた。

娘にはまだ何も言っていない。

赤ちゃんの事で先生に診てもらっている事だけは伝えていた。

もうすぐ産まれてくることを楽しみにしている。

正直、あの時間、

娘がいなければ、私達は耐えられなかったかもしれない。

きっと両親もそうだったに違いない。

当事者ではない分、感情が優先されてしまっていたことだろう。

娘に弟の名前を伝えると、すぐに

「Kくん」

と呼び始めた。

そして嬉しそうに母達に報告していた。

私達は、夜な夜な

病院でのいきさつを報告し、話し合っていた。

何を話し合っていたのかは覚えていない。

絶望と、少しの希望と

これから訪れる現実について話していたのだと思う。

答えはないのだけれど。

「たましいのおうち」について

木工作家の多胡歩未が、自身の経験から、子どもを亡くしたご家族が前を向いて生きていくための、家族の「かたち」を一緒に考え、オーダーメイドで作ります。

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